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佐賀家庭裁判所 昭和39年(家)568号 審判 1965年9月03日

申立人 上野幸子(仮名)

相手方 島田昌男(仮名) 外三名

主文

一、本籍佐賀市○○町大字○○一一九番地島田浩三の遺産を次のとおり分割する。

二、別紙目録(4)の家屋を相手方島田昌男、同徳男の共同取得とし、その共有持分の割合を各二分の一とする。

三、相手方島田昌男、同徳男は連帯して申立人上野幸子、相手方邦子に対し各金二一万六、二九〇円を、相手方義男に対し金二〇万六、二九〇円を支払え。

四、本件手続費用は申立人及び相手方らの均分負担とする。

理由

第一相続開始

関係戸籍謄本によれば申立人は被相続人島田浩三の長女、相手方昌男、徳男は浩三の長男たる亡進(昭和三〇年六月一日死亡)の子、相手方義男は浩三の二男、相手方邦子は浩三の三女(尤も筆頭者浩三の改製原戸籍謄本によれば長女とあるが、筆頭者島田富男の同謄本によれば三女とあり、後者の記載が生年月日自体からと、申立人上野幸子、相手方島田邦子に対する各審問の結果に徴して正しいものと認められる)であり、父浩三が昭和三六年一一月二七日死亡したので、同日同人を被相続人として申立人及び相手方ら(相手方昌男、同徳男は亡進の代襲相続人)を共同相続人とする遺産相続が開始したことが認められる。しかして申立人及び相手方らの法定相続分は申立人及び相手方義男、邦子が各四分の一、相手方昌男、同徳男が各八分の一である。

第二遺産について

被相続人浩三の遺産は別紙目録のとおりである。(尤も土地については下記のとおりこれが買収代金をもつてこれに代替するものとする。)

第三生前贈与について

上記相続人らのうち被相続人から民法第九〇三条所定の生前贈与を受けていると認められる者は相手方義男で同人が昭和二三年頃、婚姻費用として約一万円余を貰つていることは同人に対する審問の結果により明かである。亡進についてはその婚姻費用は不明であり申立人幸子についてはこれを否定する同人の供述以外には何らの資料も存しない。

第四遺産の評価と範囲について

被相続人浩三の遺産の価格は鑑定人古賀廉章の鑑定の結果によると、相続開始時たる昭和三六年一一月二七日当時において、同目録(1)ないし(3)の土地が計三六万一、六〇〇円、同(4)の家屋が八六万五、六〇〇円であり、現在(昭和四〇年一月一六日現在の鑑定であるが、特段の事情の認められない本件においては今日現在においても同一と認められる)において、(1)ないし(3)の土地が計六一万四、七二〇円、(4)の家屋が四五万三、六〇〇円であることが認められる。しかしながら上記土地については下記のとおり既に佐賀県より買収され、その代金として、現金四〇万一、五六三円が支払われているので該代金をもつてこれに替る遺産とみるべきである。

尤も相続財産の範囲について申立人は上記家屋に対する移転補償費をも含めるべきであると主張する。上記土地が佐賀県営工事たる本庄地区排水事業のための用地買収の対象となり、昭和三七年二月頃からこれが交渉が具体化され、同三八年一一月買収手続を了し土地買収費として金四〇万一、五六三円、家屋移転補償費として金一〇六万〇、六八六円、工作物設備移転補償費として金一八万七、八二三円が県より支払われその頃とり敢えず相手方義男においてこれを代理受領し同人において保管していることは参考人村井正一の供述、相手方義男に対する審問の結果並びに補償調書の記載を綜合して認められるけれども、そもそも上記用地買収の話が始まつたのは既に浩三生前からとは言え、県との交渉が愈々具体化し所定の手続を経て買収決定が為されたのは浩三の死亡後であることが明かである。そこで浩三の遺産として現実に相続の対象となるものは上記家屋と土地買収代金とであり、家屋等移転補償費は本件遺産分割により当該家屋を取得した相続人の所有に帰せしむべきものと言わなけれぱならない。

第五相続分の算定

被相続人浩三の遺産のうち上記家屋の分割時たる現在の価格は上記のとおり金四五万三、六〇〇円であるから、これと土地買収代金四〇万一、五六三円との合計金八五万五、一六三円が遺産価格の総計となる。これに上記義男が受けた生前贈与一万円(貨幣価値の変動が考えられるが算定困難なためそのままとする)を加えると八六万五、一六三円となる。そこで各相続人の法定相続分は申立人幸子、相手方義男、同邦子が各金二一万六、二九〇円(銭以下切捨)で、相手方昌男、同徳男が各金一〇万八、一四五円(銭以下切捨)である。

第六各相続人の生活状況と分割についての希望

申立人及び相手方義男、同邦子並びに相手方昌男の法定代理人、同徳男の特別代理人に対する各審問の結果によると

(イ)  亡進は旧制小学高等科卒業父、母と同居し、鮮魚行商をなし父母を扶養した。(戸籍謄本によれば母イシは昭和一二年二月二五日死亡していることが明かである)進死亡後は進の妻フユが鮮魚行商を引継ぎ父浩三をその死亡まで扶養した。フユは昭和三五年以降生活保護法による生活保護を受け、昌男、徳男を養育している。亡進の代襲相続人たる昌男の法定代理人及び同徳男の特別代理人は共に代襲相続人が占有使用中の本件家屋の付与を希望している。申立人上野幸子は旧制小学校、現在○○○生命保険会社佐賀支社に勤務、保険外交員として月収二万円位、内縁の夫も保険外交員として月収五、〇〇〇円位、現金分割希望

相手方島田幸子は旧制小学高等科卒業、現在失対人夫、現金分割希望

相手方島田義男は旧制小学高等科卒業、現在○○紡績株式会社佐賀工場織布保管係として月収三万円位、義男は自己の相続分を相続人昌男、徳男に譲渡したいと主張するが本件は調停不成立により審判に移行したわけであり、審判によつて分割する以上は法律の規定に基づく相続分に従つて分割するほかない。

第七分割の方法

本件遺産中家屋は現に占有使用している相手方昌男及び徳男に共同取得せしめ、遺産の総合計金額より同人ら両名の法定相続分を控除した残額を他の相続人に対する金銭債務として負担させてこれを決済する方法が相当と考えられる。

第八分割

以上の諸点を考慮し、なお本件調停及び審判に現われた一切の事情を斟酌した上遺産たる別紙目録記載の家屋は相手方昌男、徳男に共同取得せしめその共有持分の割合を二分の一とし、同人ら両名は連帯して申立人幸子、相手方邦子に対し各金二一万六、二九〇円宛を相手方義男に対しては同人の相続分相当額より生前贈与を受けた一万円を差引いた金二〇万六、二九〇円を支払うべきものとする。そこで申立費用の負担について非訟事件手続法第二七条を適用して主文のとおり審判する。

(家事審判官 弥富春吉)

別紙<省略>

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